「貴史さん…貴史さん…」僕は至福の時を迎えていた。「貴史さん…遅刻するよ」ベッドで目覚めた僕の目の前には、僕の憧れの人…美和さんが微笑んでいる。だが、美和さんは僕の兄である智史の奥さん、つまり兄嫁なのだった。僕の名は、神楽貴史。両親亡き後、一流商社でエリートコースに乗った兄貴は、僕の面倒を見ている。兄貴のおかげで普通に学園に通い暮らせているわけだが、僕は兄に感謝するというより、別の感情に日々苦しめられることになった。嫉妬…容姿、勉強、スポーツ、全ての面で僕より優れた兄貴…。最も僕を苦しめたのは、兄嫁の美和さんの存在だった。同じマンションの別棟に住んでいた彼女は、朝僕にいつも笑顔で挨拶してくれる憧れの女性だったのに、その美和さんをも兄は奪い去ったのだ…。